うぐひす


あらたまの年立ちかへり思ほゆる
離るれど寄するものは波
とほき産土・重ぬる季・あはれなべては波なるをうらるゝ年並み
はゝしろに譲れるはゝきゞはゝなればまなご姫とて下燃ゆる

うぐひすうぐひす枝うつりて
うつろふ年にうつせ貝うつしごゝろはさらずとも初音によりて
年月をまつにひかれて経る人にけふを聞かせよ
言忌はえさゞるゆゑにこゝろえよ

巣立てば松の根はとほくときじく間なく
うぐひすの音聞かまほしく願へどもはゞかるものぞ
初春のけふがほかにはとむはなく
せめて聞かせよ忘れめやとぞ

古りし巣は古りゆく冬の谷にあり春さる年になゝしそ息嘯
木づたひて花のねどこゆうぐひすの初音めづらしなきそなきそ




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