つくよみ/長歌

弥高にさゝらえをとこ照れる夜は
光しあらば
久方の雲の向か伏すきわみとて
光しなけば
蜷の腸か黒き闇のさ渡りてゐるきはみとて
世は斉し
世はたひらがる
あれ立つは世のみなかなるたひらにし

こは空蝉の人の子ろ
棲めるうつそみなるものや
けだしうつそみうつしゐる真澄の鏡そのうちや
世をし鏡ゆあれ見るか
世ゆ鏡をしあれ見るか
いづらもあらずかつもあり

生くれば泥むもの数多
乳の実の父
柞葉の母はもとより
いへびとも
あはれ
祈ひ祷むことすらも
え泥まざりて
鏡なす見れども飽かず望月に
まつろはまくほし
まつろはむ
おもひかはへも手向くれば
あれの底ひに隠りゐる
乱れがはしき禍津日は
醒め狂ほさゆ

夕星のか行きかく行き
大船のゆくらゆくらに
真澄鏡照れる月にそ舞ひあゆき
月とふ鏡
またもあれとふ鏡をし
差し向かひ合はすれば
しがみなかの荒魂

うつそみは恐き道と安からず来てなほし行く人の子ろをし月は照らしむ

暗し隅そは群肝のこゝろなるゆゑ鏡なす月を畏む人のうつそみ








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