神楽歌/長歌


いにしへは弥遠長し
いにしへゆ人の子ろみな謡ひ舞ひ
神、崇めつゝ
神、尋ね
神、和ぶれば
魂ぢはふ神代にありし歌に舞ひ
そのはじめなる時、処
そのはじめなる事の語言もこをば、と
言依らゆ

高天原の岩屋戸に
日女命隠ればや
常夜往き往くことごとに
よろづ妖発き発きて
やほよろづ神、天の安河原に集ひ集ひつゝ
まかなはしめし宴あり
うけを伏せ蹈みとゞころし
神懸り為て胸乳かき出だし裳緒をほとに忍し垂るゝまにまに
舞ひ舞ひし天宇受売がはじめとて
神の楽しび
神の座

幾夜、幾日、幾年も過ぎて過ぎ過ゆき
葦原中国にと天降りする
天津日高日子番能邇々芸
五伴の緒をまつろはせ
往きて往かむとしゝ時に
天の八衢てらしむる背の長さ七尺に余る神ゐし
いむかへば面勝つ神と
誰ぞ如此てをると問はむを詔られたる
天宇受売に答ふるは
猿田毘古なる国つ神
行き逢ひのちに名を負ひて
妹背となれるはじめとて
神の楽しび
神の座

うつそみ来れば謡ひ舞ふ
猿女君は世に伝ふ
祖たる二柱、神の血と
継ぎたる伎を
まつろひて神に手向くる歌に舞ひ
天ゆ神々降り来ては
坐す座たる神楽歌
こゝそ御子とぞ沁むらめや
妹背の二柱その御子たるを


天と土まじはりし時、まじはりし神と神とが授けたる霊

あれ歌とまじはる時に霊なりてあらたしき歌なほし成り成る







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