いはむら

稲筵川いたどればなほとほく遥けきすゑの
水上の地ゆ潺湲ぎてくだり来て押し擦らゆりし
さゞれいし百代も千代も八千代もて苛らぎゐたる
しゝへとていまはなめりてたなごゝろくゝまゆるほど
しゞみたるなほも潺湲ぎ潺湲げばいつにいづれに
まさごとも成り変はるらむさてもいまあがたなすゑを
滑しゐるいしな川へといもどすは慟傷しぶべきや
うむがしきことなるものや言問ふもいしないらへず
やすらひてちさきおほきも違はじかなほこの星の
欠片なるまことしときじくみな等しやすらふなどは
をこにしてわたに生ひてはつゝにこそおのづ憐れべ
すべからくいづれいかへるほどゝてもなにも違はず
有情みなさてもなにをか畏むやおのに従ふ
かつてなど捨てたればなほいまはたゞむねを懸きゐれ
すゑ／ﾞ＼にゆほびかに往く日々並べていしないしなよ
いまなれをくゑはらかせば投げ掛けてその現せる
　象などを頼まゝくほしく得ざれどもやゝまろびゆく
　ありやうを美しとも愛しとも至らりたるほとほり授け
　給ひゐてこゝろ支ふるさまひとつ在り給ふゆゑ
　あなやさしまさきくあるをなほ噛み締めむ

　緩るかに潺湲らがずともいもどるもなく､ふみさむくつちのしるべす玉鉾､うけひの
　いかまくほし手繰るひとすぢ絲は時じくとこしなへ､なやすらひそとおのに語らむ