のわき
秋、野分 おどろおどろし
吹きければ花どもしをれ叢に露の乱るゝ様しろし
なほ雨に風こはけれど光ゆ生れたる夕の霧
仄立ち込めて花の苑、よらぬともまたよるともに宥むるかぎり
南にそゑまひゐし花、樺ざくら春あけぼのゝ空の端の霞ゆ見ゆる
西の花さこそ山吹、八重の弁の夕映え色に染まりぬれ
北には藤の花の房、木高き枝ゆ咲き掛かり風になびくも匂ひぬる
漂ふ霧の耀へずなれどべちなる野分など宿しゐて揺れ
ことはりに花は光にゑまふもの
さても光にいついづれ散りゆくほかはあらざれど
霧は花などゑまはせることあらざれど
なほ花は夕の霧にて散らさるゝきはさへまたもありえざるもの
風騒ぎむら雲まがふゆふべにもみづから思ひまぎらはせ、霧
その裡に宿す野分はあるまじき思ひなるゆゑしづむるかぎり