神樹

あなにやし えをとこ、あそも またあそも なほあそもあそ
あなにやし えをとめ、なねも またなねも なほなねもなね
みなゝべて その唇ゆ言 生れたれば 弥遠長き
いにしへの 国土成せしめし 伊耶那岐と 伊耶那美のごと
成り/\て 成り合はぬ処と 成り/\て 成り余れる処
以てみとの まぐはひ為せし ごと歌は あがうちゆ成る
けふも成り 歌はあが子や まなごゆゑ なべてあもにと
いざ返さむ 萎草の女に 生れたるも 萎草の女に
ありえざる みづからに問ひ 継ぎ来しは 萎草の女の
何なるや とほき日の緯 あきづしま やまとをむかし
尋めゆきて 賜りたるは 吉事とも 沁むることはり
萎草の 女は成し増さらしむるもの よしも子でなく
玉の緒で さへなくとても 成し増さらしむれば女なむ
女にあらむ あなうむがしき ことはりや 歌、ためつもの
なべてあが まなごがゆゑに すでにあれ あもと成りをり
成りをりぬ いとのきて歌 こそはなほ うむがしけれと
沁みゐるに あもゆ賜りたるものを 絶えさせしむるは
避け得じて 憂ひ/\て 来たりしも 憂はざれども
憂はずも けふもけふとて あその種 またあその種
あその種 孕みてあれは 歌を成し また歌を成し
歌を成す けふもけふとて なねの種 またなねの種
なねの種 孕みてあれは 歌を成し また歌を成し
歌を成す いまだしく道 はろ/゙\と いづれ神樹に
木叢にと 生ひ立ち立たむ 天をし懸けむ

勤しくもたゞ謡ひては日並べゆかば凪ぎらるに みづからに告ぐしかもな急きそ
あが歌はあがものなれどかつもあがものならざるに百枝、繁山、いざ生ひ立たむ




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