天つ空 たゞ飛びゆけば ひと夜にて 渡る白梅
飛梅と 呼ばゝゆるまゝ 千代、百代 経たれど匂ふ
白妙の 弁は白妙の さにつらふ 色の匂ゆる
てふことは あらましゞとて あらぬとて 逆ふることも
あらざらむ 時越え、地越え 海越えて 奉りまく
ほしければ その影ゆなほ 匂ひつゝ たゞ匂ふまゝ
そのまゝに 都をとほみ むまのつめ 筑紫遥けく
追はれたる 家君追ひし 花の霊 言は違へど
言なくも 聞こえざれども 言へずとも 通はゆるもの
かつもあり 言に通ふを ほりすなば 衿を
開きては 膝を促け かたみにそ 情をのぶる
そのかぎり 言に通ふを ほりさねば かへらまに言
なきがよし 春さるなへに 雪の色 うばひて咲ける
梅の花 たゞ咲くをもて 何をかを のべまくほしや
のべたしや いにしへ人の 伝へたる 雲に飛ぶ花
飛梅よ その濁りなき 白妙に その淀みなき
匂ひにと いつにいづくに よひと見し ものはいづれも
うたがたも 違はざるらむ 違はじて 咲けば時なく
はしければ 梅は梅ゆゑ 梅は梅 宜な/\や
うれしきは うれむぞ何を 憂ふらむ 梅は梅ゆゑ
梅は梅 宜しこそなほ 沁みてゐれ あれはあれゆゑ
あれはあれ あれたゞあれの 頼みゐる ものゝかぎりに
なほゆかむ 時なく違ふ ことのなき 白妙の梅
たゞそのごとく

梅の花 心開けてなほあれはあれにならまくほしきものをや







<<   >>

とびうめ