あまのはら

天の原 富士にもかなふ 空高く 飛びゆき遊ぶ
こと好み いざなひ給ひし 時のつね 汝背、言ひをりし
いで飛ばむ いであれのむた うたがたも 鳥之石楠船に
乗り 空をゆくごと 天ゆ世を 見渡すがごと
いたもよし いづれ飛ぱむを 固めども 成せざるまゝに
ゐたればや すでに汝背なく 汝背のむた 飛ぶとふことも
すでになし 汝背、橿の実の ひとり飛び ひとりあえぬる
たゞひとり 聳ゆる峰ゆ なほ高き 空に吹く風
鳥ゆなほ 高きゆ見ゆる 人の世は 如何様なるや
如何様や 高天原は 見へざるや 八百万なる
神集ひ 語らひしとふ 天の安河の河原は
見ゆるとや 天宇受売に 猿田彦 会ひて通りき
とふ天の八街さへも 見ゆるやも 思ひ/\て
来たりしも 宗と見たきは いまだしく 見まくほしきと
願ひゐし もの、あが汝背の 玉の緒が 絶ゆるそのかみ
そのかみに その愛しきとも その深き 目に見しものゝ
何をかや 汝背なに見つゝ 絶えしとや けふたまさかに
来りしは 汝背が絶えし地 うち寄する 駿河の国は
いたも晴れ あが目に見ゆるは 天の原 富士そのかぎり
たゞおほき たゞ神さびて たゞ美しや うたがたも汝背
その目にと 聳ゆる富士を 見しまゝに 富士と等しき
高き空 その空ゆ富士 うたがたも 見しまゝ絶えぬ
絶え果てぬ あなうれしきや あなたぬし 汝背に相応ひし
ものゆゑに おのづゑまゆる ものと思ほゆ

いにしへの人呼ばひしは見れども飽かぬ富士の山やまとの鎮め、神坐ます山
その霊は富士の神にと守らゆるゆゑけだしくもなほ安らけくあり給ふらむ





<<   >>