八雲/長歌ソネット


 とこしへに番ふことなど叶はざる謡ひ初めたる稚き日ゆ
 絶ゆることなき磯貝のこの片戀は孤悲にして
 歌よ、八雲よ、言霊よ、あが身を賭して慕へども届かずに冷ゆ
 冷えてなほ増さりつ盛り高まりつ母となりぬる思ひにて

たゞ歌として産みつ詠み読みつ読まるゝかぎりなる
さだめ改め極めたく祈りつ名告り孤悲募りゐれどもゐるもとほざかる
 歌よ、八雲よ、言霊よ、をこなる母の咎ゆゑにまた水蛭子とて
 いついづれ適はるゝやも判らねどあが魂をもて

 目覚むればもはやこの身はうつほなむ
 糸竹なれば願はくば給はらまほし、奏でられまほしきものは
 ふたつなき悠けくとほくまた近き神代なればやさは茅の輪
 歌よ、八雲よ、言霊よ、あれを奏でむ、鳴さむ、賜はむ

 戀しきはいつゆいづくゆあが魂を召し謡はせつ祝ぎを成しゐるいにしへの霊
 産まゝほしなほ愛でまほし愛でられまほし孤悲戀ひて懸くるは和歌之浦やまほらま

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