さみどりのゆび/長歌


ふつふつと芽吹くかはへは
萎草の女なる軛かゝつもまた奇なるかはなほ知らで
風にそよぎて醒めゆきつ
陽にそ晒され火照りゆき

揺るゝやはき芽
葉の色は
面こそ映ゆれ
なれど背は
なほ白らかな色のごと
色増さりゆく世にありて
いまだしく身も心さへ
みづをし忘れえざるゆゑ
うすくかはへは湿りをり
触るれば離す刹那にも
抗ふやうな
みづの衣
してもな離れそ
なほもなほ
してもな離れそ
囁けり

時に吹き寄せくる風は
なほ懐かしき海の川
北へ向かはゞいづれ冷ゆ
南を懸けば緩るかにぬくもりてゆく
潮の道
この身のうちと
身の外と
そのあはひにも沖つ波
さゞ波寄せて
またも引き
なほも寄せ来る
波の道
かくもとほくに来たれども
かくも近くに帰りたり
なにをか懐かしむれども
あをき風にも目眩るめく光に育つことを欲り

たゞとこしへの野に生ゆる
草にしあらむ
萎草の女なる軛も奇をも
しづと身篭り
なほそよぐ草ひと茎は地にそ生ゆ
かはへとふ名の芽もて触る
世に

土にありて、なれども天を懸く みづとひかりに伸ばすさみどりの指
風を恋ひ届かぬ指はそのまゝに溢るゝしづくのみを捧げむ

















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