蓬莱/長歌

珊瑚/\
たれもがひとついつの日か
その手に叶ふ紅き枝
蓬莱島の隻腕の龍のありえぬ爪のみが知りゐる在処

真珠/\
たれもがひとついつの日か
その手に叶ふ白き粒
竜宮城の隻眼の亀の開かぬ眼の奥が知りゐる在処

舟を榜ぐ
榜げども榜ぐも蓬莱は何処にあるや
龍のなき腕の爪も
波をゆく
ゆけどもゆくも竜宮へ如何にゆかむや
亀のなき眼の奥も

言ふなれば蛤媛がほゝゑみて洩らしゝ吐息
戯れに
またひたすらに授けたり
 
求むるものは珊瑚とや
なほ欲るものは真珠とや
なればその手にありゐるを

空を仰がば天高く
海眺むれば沖とほく
知りえぬものゝあるらしきとふことこそが珊瑚なれ
判らぬものゝあり給ふとふことこそが真珠なれ
 
海ゆかずして蓬莱は
舟榜がずして竜宮も
舟榜ぐならばいついづれ亀の眼の奥さへも
海ゆくならばいついづれ龍の爪とて
ときつかぜ、いざ
 
欲るなればあれはゆくのみ、あがことゆゑに 願ふならあれ祈るのみ、ひとのことゆゑ





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