みづかゞみ

波紋ひとつ立たざらましき水鏡ゆゑ
たなすゑを滑さまほしやふれぬきはほど

離れぬやうあかさぬやうかいなづるその冷たきを
胸に沈めむ睫毛へ宿さむ

磨くごと水面這はせつ罫を結び書き遊びたる
象ひとつ祈ぎ懸けまほしき印文を御標とせむ
映してはたゞまぼり合ふ目の奥とほき荒野に
焦がれゐて声となり得ぬ夜音あめびたけびうそぶき
みそ／＼にさ走り出でたき剣太刀こゝろづからに
倒ふるまでなほ転まろび途絶ゆればずいと臥やりて
ひた土へ朽ちつ還らむ耳立てゝ星斗のそこひ
刺す竹の籠みてをごめく水脈を訪ふ水尾つねに
ときじくも響よまりゐたる胸ならば半夜の海の
朝羽振る波の音手繰りつゝやみの半ばゆ生はゆる
しろらかな水泡いくたもしば立ちていたぶるなみも
八重波さゞ波しき浪とがり波かたを波さへ
つま映えて散り散る波の花の跡汐もあらむや
凪ぐほどもすべからく在るあが思ひ暴き晒せる
水鏡さゆ

結びたる破邪が印ゆゑそと掬ひ上げ差し合はす上弓張り密心を
息の緒に心違はゞ物覚ゆるもみなゝがら魂振り振らせ給へたるもの