かはたれたそかれ/長歌


なべて世は相違ひゐるものらをし
違はず容るゝものゆゑに
かたみに叛き叛かるゝものなればこそ
さてもなほかたみに明かし明かさるれ
正邪・陰陽・雌雄・有無
光溢るゝ昼なれば昼の版図に夜は棲めず
それゆゑ夜は夜とふうつゝ
遍く闇の夜にあれば昼は棲めざる夜の版図
それゆゑ昼は昼であるうつゝを明かす
ことはりに

きはときはとのあはひには
いづれのきはにも属せざる哀しきものら蠢きて
たまさかきはに属しゐるものらゆ呼ばるゝ
魔とふ名に
昼の版図と夜の版図
あはひの時は禍つ時
逢魔が刻は横たはり
翳り翳れば
懐かしきものも見違ふばかりなむ

仄めく色は仄暗く
なほ仄明るく移ろひて
此処なる此処も此処ならじ
ひそと開きゆく幽界のとぼその内や
また外や
あれなるあれはあれならじ
生きゐるなどはあれのみが
頼み頼みてゐるものに他なるものや
他ならじ
たれか明かさむ、この身をし
たれも明かせぬ、この身など
誰そ彼
彼は誰
なほ乞ふは
誰そあれ
あは誰
こはいづへ

明かせぬものを抱きゐるものに優しき闇の色
闇を恐れつなほ恋ひて
きはに裂かるゝ胸なれば
いまし血潮の凍るらむ
なほまた沸くらむ
狂へども
狂ひきらざる哀しみに
露ひとしづくゝちびるへ宿すこの身に
なほ棲まふ夜叉

頼まねばなべてうつほに移ろひゆくにあれあれにあれはあれとふなほも唱へむ

















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