瑞籬の 神代悠けく 天地の 発けし初むる
あがりたるよ 高天原も 葦原中国もが
治まりて いで言霊の 八十神が 上知授かり
賜れば 幾多数多の 玉章の 人の子日並み
暮るゝまゝ 産めよ増やせよ 育めよ つゝを野狭に
千町田に 土師の業もて かはらけを 生ればみづをも
愛で統べつ さても穣れば 取り/\て 蓄へらるゝ
そを祝きつ 出立たむや 迸む つゝに天にと
拝すべく わたり眺むれば 聳えたる 火の山ゆ気は
湧き昇る 海原には 波うねり 逆巻き昂ぶり
散り砕け 地は鳴り響み 脈々と 鼓動孕みつ
戦慄きて いまあれの裡 成り出づる 茫たる滾り
なにならむ やをらほとほり せぐりあぎ われかひとかと
なるほどに あが身に依るか 言霊よ このくちびるも
のみとさへ 統べて八雲を 紡がすや 天の岩屋戸
まへにしつ 集へば思金神 仰せがまゝに
尊くも 清らな祝詞 唱へける 天児屋命
こそ あが始祖なれや 天降りつく 天の香具山
斎つ榊 玉串としつ いざ述べむ 霊振り魂を
結びては いつきの宮の 巫覡となり 言葉の花を
八雲こそ いざ詠み詠まめ 天地の ことはり、したもゆ
をり/\の 折見草のみ 紡ぎては あれしがまゝの
象もなき 刹那に消ゆる 跡を残さむ

いま願ふ梦問はるれば惑ふことなくいらへたし 引き忍ばずに詠まゆる勇みを
あが裡に脈打つ血潮たゞ遡り水上のひとしづくそは太古の声とも


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祝詞