原罪 - original sin -/長歌


四季のある国に生れ来つ
春にゐて真夏を思ひ
秋にゐて真冬を偲ぶ
夏にゐて秋の涼風、焦がるゝも
冬には春の麗らかさたゞ恋ふばかり

いま思ふ春はまだ見ぬ春なるや
かつて過ごしゝ春なるや
春は春とて歳々に違へる春といふものを

コンクリートの底にゐつ
見上ぐる空はなほもあを
けふのあをさはいまだ冬
よしや初秋と
春なるも

生まれ継ぎゆく幾憶のわたくしがゐる
なほ生くる幾憶といふわたくしも
ひづみひづみて白骨は今宵も啜り啼きゐるに
留まらまほし
ゆかまほし
廻る季節に渡る鳥
去年の鳥とも
ゑむ花はなれど去年とも違ひをり
なれば問はむや風よ風、教へ給へや
なぜ月は月と

囚はれし恒常性を糧としつ変移す そして二律背反
脊髄の熱がそれでも熱としてある哀しみを原罪といふ









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