雪あはに 降りて降り降る しなざかる 越白波の
さわくほど 高き荒海に 間なく降り 積む間すらなく
波間にと 消ゆるそのほど 玉響に 聞こゆるものは
沫雪の 嘆きの霧や のどよひて いづれに消えば
白波ゆ ことゞころにと 降りてだにも しまし積みては
そのゝちに のどゝ消えまくほしきものを 沖辺ゆ響み
けころもを 時じき波の 音に交り なほしあが耳
その奥を 満つ息嘯こそ 痛ければ あに思はじか
けだしくも あれの雪とし 生れたらば いづくに降るを
欲りすらむ いづくいづへに 舞ひ降らむ あそつゝめけり
真砂にと そのゆゑよしは あへてとふ ことせざりしも
おのづから あなや至りぬ うべな/\ かたあればこそ
ものなべて 果てつゝ消るて また絶ゆれ かたなけれども
みなゝべて 去にて潰ゆるは 違へざる ことはりゆゑに
いやとほに いやしく/\に いやはやに いやます/\に
天地の あはひを舞ひつ つゝを懸け つゝに至らば
樛の木の いやつぎ/\に 積みゆきて なほいやわかに
重ね積み 春さるけまで 留まるゆ つゝ知らぬまゝ
波に絶え たゞに息嘯を 留めるゆ 地と綿津見が
みなぎはの 潮の満たば わたのなか 潮の干りば
このつゞが つゝのうへとふ みぎりをし 漂はしくも
つゝとわた つゞとみそらと 昼と夜 有経と絶ゆと
ひとゝあれ 世にものふたつ ありたれば おのづ生れゐる
さかひゆゑ 世にものふたつ あらざらば 世にも生れざる
さかひゆゑ さかひあればし 孤悲は生れ さかひのなくば
孤悲なくも 戀もまたなし 寒ければ 乞ふて乞ひしは
ほとほるを 悠けきかつて 神代には ものふたつなく
さかひなく 世は世のかぎり たゞひとつ のちおもぶるに
天雲の 分かれてはなれ 数多にも けふはかつてを

つかねたる すゑとふうつゝ うつしこゝろ たゞひとつなる
みなもとゆ ものはよろづに 成り/\て さかひとふきは
負ひゐれば そのきはにして すゑにして みなぎはにこそ
舞ひて降れ 降らまくほしく 至りつゝ 間なく沁むをば
欲るものは みなもと、さかひ かつてもけふも

かなしびは寄せ来る波になほものどよふ雪の音のごとあがむねになほ沁むものを
いづれ絶えいづれ潰えまたいづれは果つるものならばあれは幣引きあれを斎はむ

みなぎはのゆき











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