豊祝くは 遍き夜に 射し給ふ 日に明かさゆる
世の匂ひ あしたに生るゝ 雎鳩ゐる 沖つ海石も
光りては 五百重、八百重の 波はまた 光り/\て
 空照らし 天つみ空は かつも地に 光降らせる
 人みなに 等しきものは 時、光、 雨、風に土
 月にみづ 綿津見に山 雲に空 かつも息の緒
 人みなに 等しからざる ものはいめ 願ひて望む
 もの数多 願ひ望まば 見ゆるもの 見ゆるごとくに
 見え得ざり 玉も鏡も 影すらも 霞みゆくゆゑ
 あがこゑの 聞こゆるのなば いざ給へ いらへまくほし
 あれはひと あれは荒ぶる ものなるか 思ふがごとく
 挙げ歌を 奉らむを ほりするは 日女の命
 伊耶那美に 天宇受女に 猿田彦 天児屋に
 思金 木花佐久夜 大宣津比売 たゞ畏しこくも
 沁みゐるは なほもいたみは 劣らじて いたみがゆゑに
 違ひゐる ものを語れば いたみなき ごとくふるまふ
 ことゝても いたみは消えじ 消え得ざる あが願ひゐる
 ことたゞに 思ふがごとく 沁みゐたる ごとくに歌を
 奉る ものゝかぎりと いついづれ とほき日並も
 けふとても 変はることなく 来たれども いらへ給はむ
 如何に謡はむ

 有り渡ることはすなはち謡ふことゆゑ畏しこくもゆゝしけれどもなすほかもなし
 八百万世をし統べゐる天つ神また国つ神 いたもひとゝはた弱きものを






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あまつみそら