土に焦がれよ/旋頭歌

対流の描く見えざる放物線のすゑを知る それでもたれも還るものだと

地に伏せつ乞ひたきことのやまずあるなら陽を耐へむ 消せざる罪のむたゆかまほし

積む石の危ふきなるを眺めゐるほかあらざれば息のひとつの重きものはも

ひとつ月を見合へども彼の地に頻り降る雨は鉄 「ごめんなさい」とふ不遜に塗る

道草の果てにし道へい辿りゆかばさても道 道を道としゝたるあれはも

影の濃さに惑はるゝにはゝや老い初めぬ 流るゝは流るゝものと知りゐるがゆゑ

手離せぬ思ひの錠前、凝れどもまた透き通り かうして越えてゆく河なるらむ

生くればや痛む歴史に終ひなど見えぬ されどなほ伸ぶるてを持つことも違はず

終末の手前でひとの見つむる夢の儚きをことはりと得む 野茨を踏む

天地のあるゆゑなればあがへに空の広ごりて なにゆゑいまさら雲に焦がるや

双方が手こそ伸ぶれば届き繋ぐも叶はるれ いつに思ひしことのありしか

みなひとはひとりなるもの 目にそ見ゆるも移ろひて海を忘れつ土に焦がれよ

人の身に過ぎたるものといよゝ得たるは 人の身がつくり給へるものなることはも

みづを負ひ流るゝ河ゆおのづ流るゝかぎりなるみづにしあらば 裡なす楽土

違ひゐることの哀しや けだし世界を遍きて雪降らば火は風に匂はじ

往還は地に伸び伸ぶ きのふ来たればけふ帰りとほき昔に届きたき指

掻くみづの重みわづかに消え絶えゐるを知らずゐし せゝらぎ満つるながくゆく河

みづに生きてみづに沈めることこそ息の緒であらば流れなさずにあにをか生きめ

撒く種のいかに芽吹くかえ知らずものと 降る雨になほも匿ふ畝の土色

とこしへのものなき世にてけふゆあしたの頼みがたし 震へて眠るも生くるゆゑなむ







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