●21歳


 長続きせぬ関係を始め終へ、また繰り返す。波間の小舟。

 目の前で息絶えし祖母。わたくしの証人ひとり、また消え去りぬ。

 ニヒリズム、これほどみつともなきことはなしと思へど、このニヒリスト。

 会話など絶えて果てつるこの家の公用語なる「クロ」とふ名前。

 喘息といふ耳慣れぬ響きから伸びゐる触手。病み初めてをり。

 轢かれたる結果は保険金といふ学費となりぬ。価値とは何ぞ?

 万葉集、古事記、風土記 離れても、離れてもまた揺さぶられゐて。

 元本を割りたり、父のマラソンは。オイルショックも遠き日のこと。

 文壇でなけれどもあるヒエラルキー。学生ライター・へなちよこライター。

 知らぬ間に投歌されゐしわが駄歌が採られてをりぬ。歌ゆ小説。

 恋などはしてをらずとも身に微熱。をんな、醜し・ものゝけの裔。

 書かまほし。胸にそ宿るこの腐敗。親をし憎む醜き性を。




            
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