くしび/長歌

眠りゐるわたくしの裡、眠りゐる
大地を覆ふ陽よ醒めよ
海原撫づる風、覚めよ

歴史はつねに闇の底
醸し醸され熟るゝもの
瑕も痛みもたなうらを添へ暖むるそのごとく
病みて憂ふもたなすゑでかろくもなぞるそのごとく

命あるものみな生くる奇もあれば軛あり
生くる奇は活かさるゝ軛ともなり
命もて
命繋ぐは適はざるとはの罪とも罰さへも
孕みゐるゆゑ

土といふ慈しみ得て
なほも陽といふ助け得て
またみづといふ支へ得る人の子ら
なれども病むる人の子に
等しき人はゑみ授く
こゑも授けり

眠りゐる人の子の裡、眠りゐる
神代の奇いざ醒めむ
もとより宿しゐる奇
種は自ら芽吹かるゝ
鳥は自ら巣を懸くる
虫も獣も啼きつ鳴く
なれば人の子、もはや朝来ぬ

あが裡の闘ひ、それを熱といふ なほも闘ひゐらるゝ奇
命みな薬なるゆゑゝみにこゑ せめて返さむ、世にも人にも








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