Amor Fati/長歌
さだめとは
もとより定めゐらるゝを言ふにはあらず
さだめとは
己が身に降り降りしくる
ものみなゝべてさだめゆゑ
降られつ初むるものこそが
さだめにほかなきものならめ
卵は生るゝさだめなど持ちえざるもの
ありゐるは卵は卵として世に生まれし時ゆ
生まれたるとふさだめをし得るゝもの
生くるも泣くも別れをも
絶ゆるもゑむも会ふことも
さだめはまへにあらざりて
さだめはあとにこそにあれ
な抗ひそね
こほりつく冬の寒さも厳しさも
な抗ひそね
しゝへ灼く夏の暑さも激しさも
な抗ひそね
いづれ来る波崩ゆる日も山が火を噴き上ぐる日も
天は堕ち地沈む日も
あるをあるまにまに容れむ
ゆく川に息の緒ゆだね土に沿ひ
光ひかれば闇は生ふ
かなしめばこそうれしけれ
散るゆゑ咲かるゝ花にして
解くれば降らるゝ雪にして
やまぬ風など風ならず
消えざる火など火にあらず
さだめゐらるゝものならぬ
あるがゆゑにてさだめなる
深き熱のみ孕み続けむ
受くるものまにまに受けつなほもかなしく抱くもの こは運命愛 amor fati