夜のこほり/長歌

けだしくも燈る灯りのぬくければ
とほく眺むるあが胸に
思ほゆる音のなほかろく華めくものゝのあるらむや

けだし飛びゐる鳥ならば
さても思ひしまゝにゆくとふを覚ゆる
ゆゑなくも

ときじくあるは満つること知らざるごとき
ともしさをたゞ宿しゐる身のかぎり
灯りのもとはもとなれど
ぬくきことはりあらざらむ
天ゆく鳥の思ふまゝ飛ばるゝなどはありえじて

ときじくともしくされどまた
ときじく悔ゆる
みづからを

あり/\て世を見つ見るも
知るはあが身のちひさきを
またみづからを映さむとみづの鏡を見つ見るも
知るはあが目の濁りゐるとふうつゝをも

あり/\てなきゆゑほりすものならば
あらばほりせず、ほりせじて
忌まゝほしきはなほもある霊

うつほなる身にそなにをか注さむとや 叶はるゝなばこほりをふたつ
  負はまほし さても宿るゝ射干玉の闇とてとほき地をゆくかはも


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