時の襞/長歌


わたくしのなかにそ積る砂・地層
いづれは果つる骨の灰
刹那を宿す六花
縄文杉の根のごとく
みづに繋がり
地に沿ひて
かぜ懐かしみ
火に焦がる
けふを手繰りし昼と夜
闇と光を綯ひ交ずる
同心円の日々・軌跡

長き産道
赤き闇
なほも赤みを増す闇は
久遠ほどにもわたくしの
うちゆそとへと繋がりて
そとゆうちへも繋がりぬ
絶えゆく鰓を愛ほしみ
なれど贄とし泳ぎゆく

光一条
差し込めば
甦り来る波枕
大陸棚をなほもゆき遠浅の海
岸・浜辺
風に触るれば肺胞がわなゝくやうに
謡ひだす
こゝに生れつるこゑをもて
そのかぎりまで謡ひ泣く

地層の襞はなほ謡ふ
ぐづり続くる童女も
震へて眠る乙女子も
娘の微熱
萎草の女の痛み謡ひては
そとゆうちへと解き放ち
うちゆそとへと解き放ち

わたくしでありわたくしでありえぬ霊の謡ふまゝ
わたくしでなくわたくしである玉の緒の震ふまゝ
自ら見られぬ背を恋ひ
自ら見られぬ頭を嘆き
自ら知られぬあが胸をなほも待ちゐて待ちゐては
世にふたつなきあがうちの
久遠の海を遠く近く聞く


樹でありぬ、みづでもありぬ、火でありぬ なれども土でとこしへにあり







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