うすらひ/仏足石歌


薄氷はとほき楽土を梦に見つ、眠れるやうに消ゆるたなうら 伝ふたなすゑ

南国で生くるは難きものなるも、北に栄ゆるみづとふ氷 氷とふみづ

鋭さのその先の先 氷点は茫としつゝもなほも儚く、されど涯てなく

高ければ低きを願ひ、低ければ高きを望む ひとの体温、氷魚の血潮

氷文目地 潤ひゐれど潤はぬこの世であらば土を撫でたし、みづに問ひたし

解くること知らぬ氷のひと塊は極点を懸く 北であらうと、南であらうと

この星に氷冠といふ地のありて 手繰りきらざるあがうちの海、あがそとの空

悠かなる氷河湖のごと、とほき日は胸のそこひに漂ふまゝに、現れぬまゝに

やはらかき処へあへて氷刃を滑らせる夜を狂気と言はむ、愉楽と言はむ

時に人は36℃の言の葉を疎みたがるや 雪に焦がれつ、氷を忌みつ






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