仏手/長歌


千尋なる慈悲、御仏の
千の手と千の眼に救はるゝ衆生あまたや
あまたなる衆生、救ふが御仏や
千手千眼観世音菩薩あるいはまた千臂千眼観世音菩薩
宝珠、羂索、紅蓮華
三鈷、錫杖、施無畏印
地にそ衆生の限りなく
地にそ苦難も限りなく
千臂携へゐる持物
無量の功徳明かすごと

諸人携へゐる腕あるいはたなうらたなすゑや
赤子抱きつ
糧成しつ
互み支へつ
ぬくめつゝ
時には破壊も為して為す
たなうらなれば畏こまむ

天上天下のことはりはあまた試練の連なりて
冷たきものはぬくきもの
愛しきものは憎きもの
手弱きものもこはきもの
易しきものも難きもの
いづれを選るも頼るのも
なべて託され委ねられ
生くるあはひの試練など恒河沙、那由多
なほ無量
授かりたくば授けむや
愛でられたくばたゞ愛でよ
失するを恐れず失せ失せむ
失せて失せ失すその涯に
得るべきものゝあり給ふことはりなれば

たなうらで得るもたなうら
たなうらで失するもたなうら
たなすゑに八尋の時を受け継ぎて
諸人携へゐるものは
生くる奇か軛をか知らで名付けし
仏手柑
清かに薫る諸人の宿世あらはし
耀ふ功徳


双臂さへいまだ適はぬ たなすゑで撫づる涼しき御手、芳しく







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