心象万華鏡・124/旋頭歌


苛立ちのみづたまりへと浮かんだ潜水艦なのだ、と とほくも、ちかくも、ないまゝに往く

足元に生ひ茂るのが野茨ならば踏みしだく わたしの傷みを忘れぬために

ポプラにはなれない憂鬱、ひと掬ひしてかき混ぜたティ・カップの底 天窓の奥に

沈み浮く花びら、風に散つた花びら 赤土はいづれはみづを掬へる、きつと

水面の緊張 見えてゐたはずなのに境界は薄くて透ける刃でもある

日々といふベルトコンベア 愛情そして欲情もなかつたらしく、けふかをる土

誠実と真摯が穢すものならば熱 固定した舵に渡れる海、蜃気楼

渇望のあとからやつて来るものゝ名は惰性といふ 温室に咲き乱れるバラに

朝が来て夜がまた来る 未来に起こす変異に、とミトコンドリアは低くほゝゑむ

属さない はかない強さが否定してゐる有情だけ宿すあなたに敬意を尽くさう

もう夢は見ない 余白で埋もれたページに思ひ描く自己愛を解くみづいろの式

開かれたパイプであつて袋ではない 存在は絶えず流れる、弛まず漂ふ

表層で惑ふ遊びに飽きたのは初夏 とほい日のモグラは今も宿つてゐるか

やはらかい針に刺される安心といふ歪さを背けたくない眼でみる 夏風

けふまでの轍もやがて風化する日が来るならば 記憶にレールは最初からない

通過するわたしと通過されるわたしと 共振は同心円を生んでまた消す

ハードルを眺めてしまふくらゐの熱が爪を立てゝ DNAは書き換へはしない

秒針も、星も、時空も 生存といふ輪が廻り廻らせてゆく堆積のうへ

脱ぐことを恐れた子ども いつから糸がこんなにも絡んだ時の綾織を着た

正しさに酔へる楽園 エヴァもカインもわたくしの始祖なのだから、アスピリンなんて







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