心象万華鏡120/片歌連歌(独詠) |
粉々に砕けた跡に添へてゐるもの 指先より、恐らくはこゑ 棒読みのまゝ あした産む卵は自問 恐怖はあつても 終はらうとしてゐるけふの呟き じやり石 石を積む 祈りと懺悔、それから自嘲 決断の時よ来ないで、でも来て欲しくて 人であることは重たく 遮断機あがれ 負ひ目とてひとつの驕り 否定しないよ 裏側も川は流れる 上目遣ひでも ひと粒の凶器 軌跡は変はりはしない |
海に続く滑走路 いま着く、そして発つ 地に触れてゐるのは絶えず祈り 残照 直線の絶対性に やはらかに泣けて 限界のぬくもりだけを風に放たう 飛ぶことは隣にはない 奔放であつても 両腕の密かな呪文 真上へ、真上へ 真実も真理もない、と知つた自由に 爪先の軛とは熱 素足とすれば 走ることに長けない爪に おやすみ、けふよ タッチ・アンド・ゴー その先はいつだつて海 |
壊すやうに育てるのがいゝ 南風 香る闇 わたしの中のわたしよ、おいで 中空にかすかに滲んでゆく薄い汗 記憶してゐるのは魚の頃と草の日 芽吹きたい思ひは日々が水牢だから この皮膚が従ふ夜の版図は凝る 従順は狂気でもあることを刻んで 魔女よりも夜叉になれたら 断裂のゝち 裂けさうな薄衣だけを鎧としよう 昂りと夜気のはざまの圧壊の夢 |
より高く パズルは解かずに選ぶべきもの 重力はたゞのきつかけ たゞの言ひ訳 弱さといふ力を込めて握つた風船 本物の嶮しさはまだ知らない ずつと 幾千のロジック 知恵の輪ならはづした 走り出すまへに見据ゑる世界の地層 見開いた目がある、閉ぢた目もある 歪 パーフェクト・ピッチ 鳴らない鍵盤だから 悲鳴へとあてたスケール 残酷でせう いまだけの解答だつて判つてゐるよ |
みづを出る瞬間のやう 風が変はつた 定まらないことで定まる生命の澱 真ん中で生きる知らない世界 共鳴 関係を表す化学式 すなはち基 同化することを望んだ 扉は開いた くぢら、てふ、ダチョウ さういふ白昼夢です 昼ゆるむ哀しみ、増さる違和感は、波 きつと慣れてゆける あしたもまた会ひませう ひと時の電車ごつこの慣性でいゝ 海にゐて空を見つめる 変異の狭間 |
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