心象万華鏡・106/片歌連歌(独詠)



目が合つた瞬間 さうね、嫉妬してゐる
もう思ひ出せない昔 辻で別れた

尾てい骨、まだある だけどもうすぐ消える
なのにたゞ往くしかなくて 理由は知らない

知恵の実の先には柘榴 視界の端で
原罪に気づけてしまふことこそが罰

欲張れば世界は歪んだまゝに気化して
相対といふ絶対の妄信の涯て

その日向を日向と信じられるのですね
得ることで失つたもの 立つてゐるから




真夜中の信号はあを この指とまれ
どこよりもこゝにゆきたい 
ゐたいんぢやなく

存在はあるやうでなく、ないやうである
何をしてもいゝと言はれて困るみたいに

朝までに言質をふたつ、必ずあげる
ひとりの“ひ”ふたりの“ふ” さあ朝日が昇る

日向ではちひさくなつてゐるはうが好き
その時が来たらできれば屈葬がいゝ

月齢はいまが満月 南中時刻
蝕 それは影と呼ばれる夜の号令




終点にゆきたいのなら動いちやいけない
決めるのは運命ぢやなく、人でもなくて

多数決 マイノリティよ、背筋を伸ばせ
いつだつて跨ぐ横断歩道の白線

遮断機はもうすぐ独りぼつちになるね
本当は阻むのなんて嫌ひ 犬笛

当て擦るやうに鏡へ向けて冷笑
慰めるやうに見えない自分を抱いて

降りること、乗ること 何処も彼方への途中
選ばないことを出発点として 夜













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