心象万華鏡・103/長歌


境界のうへゝと違ふ境界を
重ね重ねて
やはらかな鎧を纏ふ、日常は

境界線は防衛線
あるいは前線
守らうと
守るべきとは
思はずも
守つてしまふことばかり
きのふもけふも

侵さうと
侵すべきとは
思はずも
侵してしまふことばかり
あしたもいつも
ごめんね、は言はないけれど

いつの間に纏ひ重ねてゐた鎧
愚か者には見えないと謂はれる鎧、透明な
見えてゐますか
見えますか
見えるのならばまだぼくに
残つてゐるといふことで
それは良心
裸でも
裸ではないたましひの武装は重く

討つよりも
討たれる安心
花道の脇の露店で売つてゐて
纏めて買つたはずなのに
ぼくの鎧がすこしづゝ
見えなくなつてきてゐます
だから停めてよ
どうかそのタオルを投げてください、と
まだ辛うじて見えてゐる
ぼくの鎧の奥で
泣くぼく


をさなさ = 裸の王様 ∵ 怖さの意味をいまだ知らない







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