心象万華鏡・100/長歌

不確かといふ揺るぎない確かさの
毛布は産着
あと少し伸ばせば届く指なのに
伸ばしたくない
さゝやかな反逆
それは人として生まれた愉楽
夜の雨

胎児のカタチで凝視してゐるのは
闇に啼く沙漠
絶えず命の雪が降る深海
時を止めたまゝ熟れゆく樹海
また生まれ
また死ぬ星を
数珠にして
壊さぬやうに紡ぎゆくミクロコスモス

静寂の底、やはらかな
静寂の表面、肌にあたゝかな
時の球体
浮遊することができればそのまゝでゐられるのにね
少しづゝ歪む輪郭
この指がそれでも辿れる
はじまりは胎児
球には届かない祈りのカタチ
ひとりでもひとりではなく
ひとりではなくともひとり
存在は
そして命は

目隠しにやうやくつけるため息や
ため息にまた滲みだす冷たい熱や
その熱に怯えてしまふをさなさが
溶け合ふ涯にあるものに
伸ばしたいけど
伸ばさない
闇へせめても透明な波紋をどうか
ひとりの愉楽


火を焚いてゐるのです いまたましひは曲線えがして溶ゆくのです

一瞬の奇跡に奇跡を連ねゆき育まれるもの 奇跡は軌跡  
















      
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