心象万華鏡・95/長歌

独善と名付けた錠剤
てのひらでまた転がして持て余し
傷みは痛むから傷み
痛まないなら傷みではないはずなのに
スカスカの傷みになじりなじられて

世界はぼくを瑕つける?
世界をぼくが疵つける?
世界でぼくが汚れても
世界にぼくは汚されず
世界とぼくの間隔を測る定規が欲しかつた

望遠鏡はやるせない
とほくが近く感じても
近くをとほくから見ても近くは感じられなくて
ぼくは世界の一部でも
世界はぼくの一部ではありえないから
不遜とか
薄情だとか
傲慢や
すべて哀しい音がして

ぼくの根拠は何処ですか?
ぼくに根拠はありますか?
ぼくが根拠になれますか?
ぼくを根拠と言ひたくて
ぼくは根拠をまた探す
ジクソーパズル

寄りかかり
凭れてゐれば安心で
凭れてゐれば退屈で
凭れ続けてゐた所為で足が痛がる
傷みなどないはずなのに
またが来て
痛みは傷みがあれぱこそ痛んでしまふはずなのに
スカスカ痛む両足に責めて責められ
カプセルを飲みあぐねてはうずくまる
不眠症です
熟睡をしてはゐるのに

どつちからどつちへゆかう
どつちからどつちへこよう
たゞぼくはぼくの隣にゐたいから
呑む


カプセルに詰まつてゐるのは時の砂 かうして閉めるパンドラの函

閉ぢ込めた思ひ いづれは新しい砂へと変へて詰めるカプセル







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