心象万華鏡・89/片歌連歌(独詠)


霜柱 世界はぼくを瑕つけるから
護りたい、たつたそれだけ 視界が沈む

フラスコに沈殿をする苛立ち 破片
ひと粒の涙からでもかげろふは立つ

立ち竦む一瞬前に何かゞ見えて
とほい日の眼と耳ならば てのなかに空

空つぽのガラス・ケースに海を入れよう
この星が光れないからぼくがゐて 河

片隅の片隅だけど 銀河と鱗粉
縮尺は真ん中がいゝ さういふ吐息

きのふから来て明日へとゆく途中 here
壊したいものは永遠 指鉄砲、撃て

指先が時に従ふ ぼくの葬送
知つてゐる? さうして今夜、雪はやむんだ

真夜中の端つこ 羽化はこつそりしたい
あつたかい、凍えてゐても 鼓膜の奥が

生きてゐることはすなはち、鼓笛隊 さう
ひとつづゝ石を数へて 過ぎてゆく月

後悔を閉ぢ込めるてゐる琥珀に陽射し
ぼくはまたぼくをぬくめる 森へ帰らう





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