心象万華鏡・85/短歌


双葉には双葉の、大樹には大樹の、花には花の襁褓 をんなの

亜種・変種 獣の過去を抹消しケダモノ志願のヒューマノイド´

寄生されることで寄生をする共存 50億年後に遭ひませう

今こゝに末端として在る訳を感じてゐたい エデン崩壊

暴君といふ名のカリスマ わたしたち村民族は自決が嫌ひ

それは母 劣等感の原点が居座つたまゝ「愉しいつて何?」 

脊柱をたゞ解除せよ、放棄せよ 期間限定・軟体動物

それぞれにカスタム・オーダーした時を持つヒト 今を共用もして

逆さまの未来をひとつ浮かばせたソーダ水へとダイブ 憧れ

群青は寂しい響き 薄くうすく広げた藍が喉へと刺さる

余白へと朱肉の色を燈らせて 陸へあがつた魚の涙

その時が来るまで ぼくがぼくといふ冷たさを蹴りあげる角度に

思ひ出は冷蔵庫発 永遠に叶はなくても構はない、空

てのひらのうへに近親憎悪ひとつ 蛇口をぎゆつとぎゆうつと...、できない

わたくしの皮膚を透過し混沌がちひさくゞづる 産着の空洞

真空をやはらかく抱くガラス まだ異端者だから口笛、吹かう

みづたちに隙間なくなほ抱かれて泡を洩らした ぼくは銀色

爪先の砂粒たちと億年を分かち合ふ もう冬になるよね

澄み渡る風に紛れて息をする 皮膚といふとまらない蒸散

いつまでも見えない川を少しづゝ渡る さうしてカインの末裔

還る地平 ぼくが尖つて曲げもして涙した線、そんな成熟

機能美といふ名の鱗がみつしりと覆つてしまふ体温 言霊

それをそれ、とした瞬間にもうそれは、それぢやなくなる 真実つて何?

お一人様お一つ限りの小宇宙 別名・砂漠化する檻といふ

やはらかい不飽和脂肪酸といふ官能 生とは官能なのです

怖いもの、わたしはわたしが怖いもの 予定調和はゼラチン、きつとね

土からはとても近くてゞもとほい 星にとゞかぬ霧の眷族

有史以来、続く行進 限りある電車ごつこの乗客、いまは

虚から実、実から虚さへ産み産まれ ぼくの荒野を温室とする

人生を懸けたコレクション またひとつ増えた異端にそつと凍える

たぶんもう廃番だらう ローソンの出汁巻き玉子おにぎりは孤悲

なけなしの生命維持で装つたふてぶてしさが鎧 しやがむな

護り忘れた最終防衛ライン まだラッパは鳴つてゐるはずなんだ

抱いてゐるぬひぐるみ、名は警戒心 暴いて宥めた、冬の星座が

装つた荊の奥にゐるこゑよ、謡つてごらん ナイチンゲール

熟成のすゑに繋がる共振がうづを描いて ニンゲンの性

とりあへずいま、四肢がある 幾兆の欠片を捏ねて出来た可塑体

蓑虫のこゝろを日陰に置いたまゝ 理由はいつも日向にはない

指先が白く冷たくなつてゆくスピード 夜の刺殺は未遂

人肌のぬくもりといふ接点に出遭へたんだね 世界と世界は

山間に雪の香りが舞ふ これもひとが叶へた夢、さゝやかな

大陸は飛べない、空は止まれない けふ幾すぢの絲の雨は銀

空耳を降らせるやうなあを いまは孤独がちょつとちょつとだけ好き

指で拭ふ埃 暴いて暴かれて痛くなるほど夕陽が沈む

宛がはれた透明な枷 安住は片目を瞑つてかなへるのだらう

思ひ出は毛布、さうして有刺鉄線 ためらふことなく巻きつけてゐる

半音階 まるで斜めに差し込んだ陽射しのやうにどこか壊れる

ガラスより哀しいプラスチック また夜が静かにやつて来ました

わたくしの奥の悪女と向かひ合ひ一緒につくるジグソーパズル

小指だけにゆるく包帯、巻きつけて をんなゝのです、かういふ風に












 BACK  NEXT