心象万華鏡・79/長歌


とほい日の空から降りた天気雨
睫毛のやうにやはらかい苔のうへゝと
砕け散る飛沫のなかへと
永遠の大地の底へと
降り急ぎ
きのふにけふに陽炎は熱に任せて還りゆく

外へと放つ熱のこゑ
うちへと進む熱の色
互ひの熱と熱といふ呼び合ふものが交差して
世界は廻る
ゆつくりと廻るおほきく廻りゆく

いのちのカタチはうづといふ螺旋のカタチ
熱といふ愛しいカタチ
始まりが終はりと出会ふ
永遠が刹那と出会ふ
真ん中が端とも出会ふ
ゼロですらイチに出会つて
イチはなほ無数に出会つてまた出会ふ

波といふ名の糸を縒り
綯ひ交ぜてゆくとほい日と
織り上げられるとほい日が
隣り合へたら
世界にはぼくといふ名のぼくが生まれる


雨の日は雨へと還る 風の日は風を泳いで雨を見つける

透明を願つて泣いて濁らせた世界の端と また近い空








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