心象万華鏡心象万華鏡・78/短歌


胎児へは還りたくあり、還りたくなくもあるから アダムの化石

たましひの器 闇とふ空洞を抱へてリゝス、始祖の末裔

切れたのは一瞬、どれほど隔てゝも切れないみづといふもの サキエル

真昼とはひとがひとゝは見えぬ闇 シャムシエルその螺旋の記憶に

雷のやうにラミエル 定義より克明すぎる事実、命の

とほい日の同胞として 失つた尾鰭をいまだもつガギエルよ

イスラフェル 細胞が負ふ分裂といふ営みの哀しい調べ

急ぎすぎた成熟、ひとは精神の蛹 サンダルフォンとふ遡行

内側に濃硫酸の雨を降らせ生きてゐる この身はマトリエル

重力といふ永遠は隷属、と サハクィエルが涙を零す

恐れとふ防衛本能 ゆきすぎた進化を拒むイロウル、わたしも

夜それは影、存在はみづからの闇とふ虚無を匿ふ レリエル

寄生せよ、分裂もせよ 原初とはバルディエルとふアフリカにある

喰らふほかに生存はなく 力ほど虚しいものがあるか、ゼルエル

触れ合ひは浸食し合ひ 羽ばたけぬ感情をアラエルが見てゐる

生命の系譜は螺旋 歴史すらとり込むアルミサエルこそ子宮

共生が叶はないなら駆逐する傲慢な生 リゝンの子たち

いづれでもあり、いづれでもなく ひとゝ異なる軸はヒトが異なる

万物にニュートラルなどありえない タブリス、ぼくらは出会つてしまつた

滅ぼされることを乞ふこと、滅ぼすこと 真のリゝンはぼくらか、きみか
impromptu 4 evangelion












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