心象万華鏡・70/長歌

本当の闇は世界にひとつだけ
ぼくにとつての本当の闇は世界にひとつだけ
ぼくが在るから有る闇は
ぼくが生み出し抱つこして
ぼくが消えれば消えるもの
いつかその日に

本当の光は世界に満ちてゐる
世界にとつての本当の光は世界に満ちてゐる
例へばぼくがゐなくても光は世界にちやんと有る
ぼくが光と気づければ
世界に満ちてゐる光
ぼくが消えても消えなくて
けれどもやつぱり消えるもの

世界は最初夜だつた
夜といふ名の空つぽの
器の中に取り込んだものは恐らくひとつだけ
あつちとこつちの二元論
最初に有つたものたちを
あつちとこつちに区別する
後から造つた境界線
不可分ですか?
不可分ぢやないんぢやないの?
もう眠い

けふにはけふの空つぽへ
けふにはけふの闇を生み
けふにはけふに光だと気づけたものを詰め込んで
眠くなつたら
とろとろとかき混ぜようか
光だと呼ばれる闇と
闇といふ名前の光
おやすみなさい

がむしやらに走つた後の空つぽが教えてくれた成熟証明








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