心象万華鏡・62/長歌


ひとつ問ふ
「けふはどうしてやつて来た?」
「けふにどこからやつて来た?」
境界越しに向かひ合ひ
臆病者は嘆き合ふ
「ぼくはそつちへ行きたいよ」
「ぼくもそつちへ行きたいよ」
出会へてゐても出会へない
ぼくとぼくとが嘆き合ふ
「どうしてきみは越えたいの?」
「どうしてきみも越えたいの?」
「ぼくが行きたいそつちから、どうしてこつちに越えたいの?」
「ぼくが越えたいこつちから、どうしてそつちに行きたいの?」
臆病者は越えたくて
臆病者を越えたくて
できずに嘆くぼくとぼく
「だつて越えれば会へるから
越える途中の境界のうへの瞬間
会へるだらうから」

ぼくにぼくを異端者として発見させて育んだぼくの刻印 育つてゆかう

















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