心象万華鏡・51/片歌連歌(独詠)


縫ひ針のきし/\といふ尖つた悲鳴
人造の夜を貫くタワー、か細く

こめかみが些細な熱をまだ手離さない
まんじりと薄目のまゝで凝視するもの

薄笑ひ、そんな冷酷 波が砕ける
堪へたら止められますか 群青の息

蟻の群れ 塞き止めている大地の裂目
谷底が消失点に見える 拘束

目薬が見下ろす眼球 夭折する今日
一瞬の氷河、あるいは華奢な薄氷

文字盤の三つの影が一つになる今
待つてゐる、待たせてもゐる 世界の掟

明滅はストップモーション 限界、離陸
これ以上、もう撓れない弦 解き放つ

放物線 そのてつぺんが少し止まつた
目の縁が匿つてゐる小さすぎる天

天空の端へ最後の流星 還る
一条の朝日に光る ゆふべのしづく

ふせためが花咲くやうに 生まれる刹那
さやうなら、きのふの恐怖 透きとほるゑみ























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