心象万華鏡・45/長歌


水滴が精一杯に誇示をする
溢れるほどの内圧と
弾けるほどの外気圧
これがわたしの境界と
精一杯に誇示をする

ちつぽけすぎる水滴の中は大海
真空の密閉空間
聞こえない
もう何ひとつ聞こえない

わたくしといふ水滴の真ん中はどこ?
全周囲、違ふことなき等間隔
さういふ場所をたゞ求め
沈んで、潜つて、浮き、もがき
やはり地球はあをかつた、やるせないほど

弱すぎる心に適はぬ力だけ宿したヒトよ
在るといふ幾億兆の原罪よ
笑へないから笑はない
笑はないから笑へない
ならば吹雪けよ

水滴に地吹雪が舞ひ
雹、霙、また降ることで
水滴の境界、それも水面といふ真実があるのなら
溶けて溶かして冷やされて冷やして適ふ境界は
波打ち際のぬくもりといふ

雨が降る 戦地にもまた廃墟にもヒトの子供に違はぬ雨を
陽が昇る ビルの密林、荒野にもどの命にも等しく、光










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