心象万華鏡・38/片歌連歌(独詠)

言ふあなた、答へるわたし、ひと言ひと言
息遣ひ、等間隔の向かう 永遠

閉ぢ込めてしまひたいもの、それは隔たり
別々に生まれたといふ哀しみゆゑに

別れゝばまた逢へますか? 明日の鼓動
なほ昇る 昇りつめるといふ名の破壊

閉めること その別名は開けることだと
瓶詰めの温もりの奥、荒野が見える

温室の鍵なら埋めた そういふ秘密
とゞかない、とゞけない空 極光が啼く

見たかつた、ふたりで 氷原とふ極限を
裂け目から夜に熟れゆく石榴 なほ裂け

溢れたらもう戻れない 化石は砂に
終点はちひさな標 線路の果ての

海猫が彼方に消えるひとすぢの点
風に舞ふものは花びら、雪、飛沫、こゑ

背中へと寄せたくちびる 淡雪ほどに
迫り上がり来る透明な波紋 渇いて

緩やかに互ひに互ひ、重ね 風紋
あなたゞけが今は見てゐた このくびすぢを


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