心象万華鏡・36/長歌

果てしなく広い世界の真ん中に扉がひとつあつたとさ
扉のこつちはあつちでね
扉のあつちはこつちでね
扉を開けて出てゆくか?
扉を開けて入らうか?

判らないから審判を法王さまに頼んだら
法王さまは慈悲深く、法王さまはケチんぼで
女教皇さまだつて冷静だけど素つ気無い
孤高を保つ隠者さま、それつて偏屈とも言ふよ?
ならば愚者でもいゝぢやない
知らない、だから大胆で
知り過ぎちやつたら窮屈で

正義といふ名のエゴがある
誇示する力は戦車です
躍起になつた皇帝と
高潔にして高慢な女帝がむかしゐたさうな
だけど戦車の轍から生まれた歴史だつてある

まだ終はらない逃避行、もう吊るされた男
さて、どつちが安息できるかな?
覚悟・絶望・その中で何を悟つてゐるのだらう?

悪魔に魂、売り払ふ?
悪魔はわたしの中にゐる
悪魔はあなたの中にゐる
堕落が悪魔だとしたら
節制すればいゝですか?
でも今でしかできさうもないことだつてあるでせう

塔は星より月よりも太陽よりも高ければ
あら素敵だわ、素敵だね
でも崩壊もし易いよ?
ねえ、恋人よ永遠に一緒にゐよう
えゝさうね
だからマンネリしちやうかも

闇夜の妖しい煌きは死神の持つおほき鎌
死んだら全ては終はりかな?
ならばどうして世界へと生まれ来たの?
  
永遠の荒野にひとつある扉
出てゆくための扉でね
中へと入る扉でね
水晶玉に映るのは表と裏の両方と
魔術師さんが言ひました
「だから自分で運命の輪をおまはしよ、その両腕で」

正位置と逆位置がある とほいから近く感じる世界に生まれて



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