心象万華鏡・35/短歌

結果論、後から言つても仕方ない? 納豆パック、かん廻します

洗面器、引つくり返して引つ掻いて納得をする 震へてゐるね

ゆるゝんと冷やしたいもの やぼつたい固形燃料、どこかにあつたね

疎外とふものを固めた街として紐育 あのどんみり曇りの

思ひ出は蒼碧 また爪先でざりざり確かめたい色の日

あをといふ色にも齢、あるやうに蒼とか藍が喉にころゝん

昨日から誘拐されてゐる星がある 数億の瞬き、そして

端つこの非常階段 真冬でも真夏日だつた感じなんだよ

トランプのタワーはどこかしぶとくて 逆さ睫毛がちびつと痛い

真相は暴かれるためあるといふ偽り 杏仁豆腐のやうな

てのひらの生命線をなぞるけど 存在といふソンザイ、涙

帰れない、なんて言はない 帰らないものだとしたらトルコ石とか

逆上がり、ぐりんと廻つて何、見よう? 舟はボードが好きなんだけど

傲慢はコペルニクスの言ひ分と思へちやつたの わたしは廻る

二の腕に触れないくらゐ 山側の空と木綿と梢と光

小数点以下ならばいゝ 分数は哀しいでせう? 灰色でせう?

タイルとか石畳とふ升目 この足の面積、地球を踏んだ

お茶碗の縁が避難をしてゐます 膝にてのひら、添へた瞬間

タメイキは路肩に置いてゆく 坂が登りであればもう東だよ

我侭の分だけ粘土、置き換へた季節があつて 空がすべてゞ

曲線も線なのだから 体積を測りたいつて感じちやうもの

手袋に詰め込んだもの 酸つぱさや、くすぐつたさや、甲羅の感触

日常に壁あります とほくから伝はる波紋がまだぬかり気味で

ビーカーの中身が糊で、理科室の扉を閉めた 生卵の殻

奔放に伸びる羊歯の葉 経験が過剰防衛、させてしまふね

冥王星、それでダメなら彗星でいゝ 離れゝばまた会へるから

バルサンをいち/\焚くといふ徒労 共生ぢやなく宇宙樹みたいに

ゆつくりとネルドリップで 願ふのは半透膜よ、逞しくあれ

砂の味、鉄棒の味、正露丸の味が何だと言ふんだらうか?

レタスより長ネギ、セロリよりゴボウ そのうちサンショウ、といふ憧れ

切望はプラスチックのやうだつた 哀しかつたよ、過去形だけど

乳幼児みたいに総合感冒薬とふおつぱいを飲んで 船旅

吹き抜けてゆくブリザード、西に向け 背中の穴に網戸があつて

単位とふ便利なものや母国語や 狭い心が悔しいんです

アルコール・ランプに蓋をする瞬間、見るのはいつも流氷の海

喜望峰に吹く風、パナマ運河にも吹く風 膝がまだがく/\する

違ふものを切り捨て保つ平安はキャラメリゼだね 零捨拾入

哀しみは最大公約数 そして最小公約数といふ1

晩餐はサプリメントのフルコース だけど徐福はまだ帰れない

合はせ味噌 この普遍なるphilosophy、あるいはaesthetic? 知らない

弱虫がまたなりたがるアルマジロ なれない、だから憧れちやうんだ

残酷なものはシーソー 夕焼けの公園の奥、ぎつたん ・・・ぎつたん

うにやうにやと湯気に興奮するなんて 野良猫だから? 野良猫なのに?

狂つたら神様、死ねばカリスマといふ落書きの掛け軸 虫食ひ

我侭と素直、奇人と修験者のオルトゝリジン 塩素がざらり

カールした毛先とレースのリボン また岩石崩しだけしてゐます

昔ならトーテムポールが何となく恥づかしかつた 胸、張つちやつた

再会はあつちの空で 指切りをしよう、みんなと指切りしよう


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