心象万華鏡・34/短歌

明け方の夢より夕の問はず語り 後悔、アリンコ語ができないよ

さう、どうか天より糸の雨 そして肩甲骨を隠してゐる髪

軟骨の悲鳴が響く 立つてゐる自由・不自由、それがなんだよ

反映と反射の違ひ、考へた 河の流れと川の底かな

したはずの継承 膝の裏側が意固地になつてゐるつてことで

理不尽と不条理、秤で比べたら目盛りがふがふが反抗期です

行つた場所、言つた台詞を擂鉢で丁寧に擂る ぜんぶ陽だまり

カサブタをわざと剥いたらあをい空 戯れに割れガラス、握つた

剥がすならギョウザの皮と決めてゐて マスクの内側、まだ濡れてゐる

踏ん切りは消火器の泡 指先のざらつきだけがちよぴつと痒い

鬱屈としてゐる夜は夕焼けの化石になつた カプセルの中

天窓のとほくに夜がしやがんでは廻す糸錘 点・線・面・奥

脱走はパーティ会場からでした まづは河原で隠れん坊、だよ?

くたくたといふほどぢやなく脛だけが疲れてゐます ダンゴムシ、好き

慎重に折つても歪む鶴がゐて 砂に踵を押し付けちやうんだ

端つこといふパンの耳 指先に凶暴さだけ宿して海底

こゝまでが陣地だとしてあつちとかそつちはきつと天国 ワタ飴

華奢すぎる飴細工、ほらぐにゆぐにゆにとかせちやうんだ ゆつくり壊せ

這ひ/\の真似事します 歩行器の代はりの手ならぜんぶ要らない

すべり台、場所取りしたのは影になるした 空よりも地上の破片

まだ痒い 皮膚の感触、無視しても魚でゐた日がこつそり、くすり

握りしめた手に肉球を移植して猫でゐたけど 土で汚さう

秘密はね、散らかし放題ちらかしたトマトの種です 頬つぺ、撫でたよ

ゴム紐で結ふ髪の先、いつもよりもう一回だけ結ぶ 満足

まなざしが覚束なくて、こんなにも近くがぼやん でんぐり返り

見えるとふこの鈍痛は雪道でうつすらうかぶ汗 届かない

哀しみをそれとは気づけないラクダ オアシスの地下六階辺りに

駄菓子屋の飴のくじ引きだと思ふ あるいはパン喰ひ競争でせう

こんこんこん もしもし? それならかりかりかり やんはりやんはり野良猫のヒゲ

どの川もそれでも最後は海 なにも恐れる必要なんてないぢやん

中からか、外からなのか、でもドアはどつちも表で裏で 鉢植ゑ

パブロフの犬、それは罪 十字架は負ひも負はせもしてゐるのだらう

擦るだけ擦つた右目 いつまでも育てゝゐない苛立ち、アザミ

違和感はホットミルクの薄い膜 緊張感とは言はないんぢやない?

心へとひと坪くらいの楽園を設へたとふひと 川向かう

もう少し、もう少しとふ傲慢を希釈する模試 少し貧血

なぞなぞの二元論だ、と アルバムが歳と一緒に増えてくれない

スクリーンセーバー、もうすぐ切り替はる画面を待つてゐるわけぢやない

ニンゲンである証です 毎日はコルセット、いや、犬の「お座り」

厄介なものは感情 ヤドカリのやうになりたくないからなりたい

ごむばんど、あるいはめろんぱんとして裾には草の実だけ残つた

正攻法、それはすなはち異端とも言へちやう 中華ドレッシングです

生ひ茂る草、掻き分けて掻き分けて 迷子は迷子を確かめられたよ

トレーシング・ペーパー そしてラップするお茶碗の底だけがシンドい

怖いより恨めしいかも シャッターのピントとふ名のプライオリティ

共にゐて、共にはゐないものでせう アクアリウムの中は外だよ

ねえキツネ、教へてほしい あの薔薇が判れないこの幼さは、いつ?

革命としたならそれは分刻みで起こつてゐます 浮き輪を投げて

浮き草であるとふ嘆きはパラノイア 組体操やマスゲームだよ

差し伸べた手に爪があり、指がある それは吊橋、放射線状



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