心象万華鏡・18/片歌連歌(独詠)
灼熱の大地 ペルシャの調べの記憶
渇望といふものすらも知らない瞳
ありきたりの不可知論など語る幼さ
小気味よいほどに理想は打ち砕かれて
小夜曲 鍵はゆつくり奪はれてゆき
抗へぬまゝに許したものは征服
服薬か服毒なのか惑ふ間もなく
連れ出され見せられたのは世界の広さ
境界はたゞなにもない一面の砂
人間の定めた都合 愚かしさゝへ
合つてゆく鼓動と鼓動 空、泣いてゐた
幾筋も瞼の裏に星は流れて
前世では魚だつたと 幾億の年
風化する遺跡の影に急かされるやうに
足跡がふたつ並んでゐた 海沿ひに
この波のさらなる向かうにはインド洋
満ちて引く波紋 あとから文明と呼び
興るのも壊れるのもまた人類の熱
またいつか行かう 独りを噛み締めたなら
邂逅と永遠の砂 しづかに眠れ