心象万華鏡・16/旋頭歌
言葉には置き換へられない足りない何か 哀しみがざらついてゐる De Profundis
号令はシナプス経由で空回りする Festina Lente 矛盾に慰められて
一瞬の交感といふちひさな灯り、目の前の海が闇です Quo Vadis?
本当はこんなにしやがみたいのに Cogito, Ergo Sum 水脈たちよ、怖がらないで
Mors Tua, Vita Mea またとほくで火花 透明な哀しみすらも、ヒトに生まれて
オン・ボーダーとふ現実に手を焼いてゐる Ira Furor Brevis Est 泥の川より
敗北は血の味ばかりする Aliis, Non Sibi Clemens 愚かに強いて
Si Vis Amari, Ama 素敵にみじめだと思ふ こんな痛さも悪くはないか
基本的に鎮痛剤は効かないといふ自家中毒 Date Et Dabitur Vobis ・・・波
Curatio Vulneris Gravior Vulnere Saepe Fuit 絆創膏は嫌いなんです
この胸の水溶液が過飽和 Disce Gaudere 通風孔は山側がよい
夜空 Ab Uno Disce Omnes ほら、星たちの息遣ひさへ感じられさう
三角州はしづかにそつと Scientia Est Potentia 踏みしめてゐる地面よ、かたく
海の沖、もつと沖ならキラキラ Vive Hodie さあ、もつとずうつと沖の沖まで
訊いていゝ? Cognosce Te Ipsum つまりねえ、だれも見えない鎧が寒くはないの?
Audendo Magnus Tegitur Timor 力をひと息に込めてカミソリぐつ、つて握るよ
曖昧は安心 Vere Ac Libere Loquere この屈折率を愛撫しようか
永遠の祈りなんです Si Vales, Bene Est; Ego Valeo たつたひとつの祈り
ふかふかの茂み Aurea Mediocritas アドルフは哀しいくらゐ怖かつたんだ
Tu Fui, Ego Eris けふ感じたんです 入口はともかく出口はみんな同じ、と
知らぬ間に眠りにおちる Dum Spiro, Spero でもおちないよ、おちられないよ
Vive Memor Mortis きつと本当ならば隣よりとほくに座らせておきたかつた 死
選ばずにゐられないから物悲しくて Probitas Laudatur Et Alget 孤独
Carpe Diem 動かし難いひとつの事実は時間軸 わたくしといふ発条仕掛け
無は永久の救ひ Nemo Ante Mortem Beatus やさしい子守唄を、やさしく
‘Alter ipse amicus.’