心象万華鏡・12/短歌
ことし最初の半袖に肘、はにかんで 頭の芯が甘く疼いた
樹の幹に耳を添へればみづの音 もつとください、わたしに力を
反逆はひとつ投じる角砂糖 帰つたらブレーカーを落とさう
膨張の一途を辿るヨーヨーに怯えることで免れる罪
真ん中はぜんぶ空洞 ピーナツの殻を繋いで巣篭もりしようか
堕ちたならふつ/\涌いてゆくのだらう ヒトの形に神、象つて
小規模なエクソダスかも 幾兆の世代交代的雑念は
かつて深海魚だつたはずが知らぬ間に淡水魚とか古代魚とかです
けふ田圃がパレットだから瞠目せよ 天上界から伸ばされた手に
マゝナーン・マクリールへと捧げればティル・ナ・ノグさへ海に見えると
ゆるやかに確かめたもの 受胎して来てゐた星が刻んだ地平
たぶんこのぬくもりは軒、雨宿りの これから先も変はることなく
ラックスのあをいあをい海 密やかな互ひ違ひの折れ線グラフが
何度でも縄跳びをして跨ぐのは大波小波 きのふはあした
地下茎は噴水みたいな循環のほんの一部で全てなんです
雨の中ゆつくりとした退行です このずぶ濡れが懐かしすぎて
大空の民の末裔らが叫ぶ、「飛べぬから飛べ」 フォルクローレで
この世界なによりも音が美しい楽器・肉声 人の肉声
人は歌ふ 歌ひ泣いては聴き泣いて、地に沁みさせて地球は廻る
鳴き、吼えた、遥かな記憶たずさへるかつての獣よ 今こそ謡へ