平原をゆく河/仏足石歌


違はざる軛なるらむ うつそみのきはみ懸くれば老い易からむ、成し難からむ

正しきに添ふる指など欲らざりと思ふも 今宵の月に背けず、水面に現る

進めばや進みしゆゑの裏・表 遥かエデンを追はるればこそ、叛きたればこそ

走りたき熱を孕まば叫びたし 然れど風に輪郭は崩る、軌跡さへ熔く

寄り添へばくをんのごとく思ほゆるあはひ 近きの近からぬとも、遠からずとも

交はりて定まりかつもいづれ離る 増さり増さらば壊るゝ時計、崩るゝ循環

日常に含ませまほしきひと粒の眠剤 乞はむ、さてもな問ひそ・いたくな知りそ

越えば海、あるいは夏と覚ゆればなほも問はむや光いづ方、東この方

待ちゐるを朝と決むるは冷淡と信じらるゝや 世に抗へどあれに従ふ

それと知らぬ境あまたにしてきのふ何を越えしか 鍵穴の風、捨てらるゝ爪

底流に載りゐるあるいは底流の尾を手繰りゐてなほも流るゝ されど抗ふ

跳ばぬなら根ざせればよい この指を掛けゐるとほい明日の釦、無二の焦点

今のみを生きゐれどなほ今のゆくまゝに生きゐる 過去にはあらじ、未来にあらじ

その杜の深みを知らに ひとつとふシェルターを以て裂かれたるひと、裂くらむもひと

平原をゆく河よりも緩るかに波なす歌よ 激しさまろく、傷みも深く







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