平方体の宇宙/長歌

無限へと広ごる扉
無限をも呑み込む扉
放熱と吸熱、そして狂熱を孕み孕みて
従ひてゐるかのごとく振舞ふも
平方体のうちにゐる宇宙にたれも知らぬまゝ
従はさらる

二次元の宇宙、すなはち深海に
漂ふ夜光虫のごと
こゑなきこゑの交錯に
隆起する陸
荒波に崩ゆる岸壁
静寂が促し続くる塵・風化

砂塵の果ては
波に浮くちさき水泡のこの身のみ
聞こえゐざるや
あが熱は届きゐざるや
渇けども渇きゝらざり
潤めども潤みきらざり
まぼろしと呼ばるゝ実はあらざるや
見えざる糸は糸でなく
形状記憶合金のワイヤーといふ哀しみに
縛り縛られ
やはらかく拘束し合ふ

異次元を
ゆらりゆらゆらゆく人は
ピエロ
ジェスター
オーギュスト
アルルカンとも
されどなほ
いづれホワイトクラウンとなるを願ひて

深海に熱なき熱を灯しゐる
夜光虫また啼けよ、啼け
無限の闇に
果てなき焦土に

流星が宙をひとすぢ裂きゆきて裂目ゆ洩るゝ微熱の欠片








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