●24歳


 医師ゆゑにかの難病の教へ乞へど、瞠目そして顔、背けらる。

 もう二十日、鳴らない電話。鳴らせどもとりてもらへぬ電話とベルと。

 義母となるはずのをんなは陶然と札束、翳し言ひき。「不浄の血」

 安直に定量法的幸福を得むとしゝ罰。別れすらなし。

 病身の母ゆゑ婚約破棄されき、と憐れむ世間。母に罪なし。

 脊髄の中の骨髄、伽藍堂。「どうしてあなたは立つてゐるのか」

 欠勤はせずとも遅刻・早退が累々。社会人に黄信号。

 心停止・緊急蘇生されたるは父母でなく、わたくし。...喘息。

 モルモット。新薬投与の同意書は真つ白けつけ、命の分銅。

 書かるゝゆゑ記者でありをり。書けぬならそは何者ぞ? 能力でなく。

 内辞にはやたらとほくの支局名、部署は営業。...肩叩かれぬ。

 経歴も能力とても二の次と。企業は勤め上ぐる者、欲る。




           
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