●19歳


 解放の代償賄ふ白き塔。チューブを纏ふ赤子の夜泣き。

 かつて市民講座で学びし師にこゝでまた会ひをりぬ。上代歌謡。

 週末にやうやく逢はる。許されてなれど逢へざる時ばかりとふ。

 あの女と会はずに過ごしゝ二日間。呼吸がラクで、調子狂ひぬ。

 知は知にて智とは異なるものなるらむ。差別被差別逆差別区別。 

 倒産のあの爪痕が緩るかに、薄れゐるらし。父のゑみがほ。

 ひ弱なる自己主張する三歳児。2800gの叫び。

 書くといふ切符に期限はあらざるも、乗りたき汽車は昨夜に発ちぬ。

 焦がれゐしはずの卒業。シゲさんとわたしの距離が間延びしてゆく。

 アルバイト・講義・家事・またアルバイト。たれも等しき24時間。

 恋といふ夢見てゐし、と。現実はたゞ気忙しく。後期の試験。

 告げられし別れに手応へなきことは薄氷に似る。雲は流るゝ。





          
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